オカナガンワインと出会う

1999年春、私はカナダに移住しました。移住地はオカナガン産ワインの産地でした。
その年の秋、知人の紹介でワイナリーのオーナーと知り合い、彼らが作る良質なオーガニックワインを日本に輸出し販売するビジネスを2000年春にスタート させ現在に至っています。


輸入ワインがひしめく日本はワインビジネスがとても難しいマーケットです。数多くの知人から「止めたほうがいい」と忠告されました。しかし私は今もやり続 けています。

誰かがやらないと永遠にオカナガン産ワインの素晴らしさが日本に伝わらないと思うからです。
その誰かとは私自身なのだ!という想いが全ての原動力になっています。

超地産地消のワインのため、基本的に海外に出回らない貴重なオーガニックワインの日本輸出を2000年春から開始し、ネットショップ【わいん@カナダ】で販売を行なっていま す。

また、私は毎年10月から4月まで何度かに分けて集中的に日本に出張しています。


実際にオカナガン産ワインを味わっていただく機会を、さまざまな形のワイン会や写真展、ワインイベントを通 して皆さまに体験していただいております。

カナダのこと、オカナガン地方のこと、
そこで作られるワインのこと、、、

産地に20年以上在住しているから分かる事をワインを飲みながら皆さまにお伝えしています。



幻と言われるオカナガン産アイスワイン

アイスワインは、厳しい気象条件と全てが手作業のため、大量生産できません・・・
春に作付けし、収穫は真冬の「ある1日」だけ。この日を逃したらアイスワインは誕生しません。

厳しい寒さでブドウが氷結し、それを一気に収穫し、一気に絞ります。水分と果糖エキスの氷点が違うため、マイナス8~15度で氷結したブドウは、果実の中の水分は凍っていますが、果糖は凍りません。

これを搾ると水分は凍っているので液体にならず、天然エキスの果糖はポタポタと液体になって出てくるのです。この果糖エキスだけを醸造したものが、アイスワインです。普通のワインに使用するブドウの量から、僅か5〜10%程度しか作ることができません。

氷結したブドウ・・・それがアイスワインになるのです。
全てはカナダの大自然が生み出す宝物です。

これは2006年です。白のアイスワインとなるピノブランのブドウです。驚いたことに、毎年の悩みのタネである鳥の被害にほとんど遭っていませんでした。丸々と文字通りの「鈴なり」状態となったブドウは、ずっしりと重く、大豊作を感じさせてくれました。



「アイスワイン」と名乗るためには、厳しい基準が法律で決められています。気温、果糖度、収穫場所、圧搾場所、生産場所等を条件が全て揃わないと、同等品であってもアイスワインと名乗ることは出来ません。

アイスワインはパテントなので、商品名として使うことができるのはドイツ、カナダ、オーストリアの3国のみです。(偽物、類似品が日本国内に多数出まわっていますのでご注意ください)。


私(滝澤)です。2年ぶりのアイスワインの収穫だったので、今までと違ったうれしさがありました。やはりカナダの冬はアイスワインの収穫無くしては語ることができません。改めてアイスワインの仕事ができることに感謝の気持ちで一杯です。


カナダの大自然が生み出す究極のロマンがアイスワインです。マイナス8度以下でブドウが凍りつくことが最大の条件です。早い年は12月の始めに。遅い年は1月末にずれこみます。
甘さをタップリ含んだブドウは鹿や鳥の餌食になりますから、出来高は毎年、変動します。また暖冬の年は出来高が急激に下がるなど、安定しないリスクの高い生産方式ですから、大量生産することが出来ません。

2010年以降は温暖化と野鳥の餌食によって、アイスワインが収穫できない年が連続して続いています。


3日前から降り続いた雪によって、ブドウ畑の中は一面の銀世界となりました。ふわふわとしたパウダースノーで覆われていますから、足を取られながらの作業は体力を激しく消耗します。ブドウもすっぽりと雪を被っている姿が印象的でした。



アイスワイン作りにおいては、世界中で一番美味しいアイスワインが作れる地域はカナダである、という人もいるくらいです。

いずれにしても高いレベルのワイン技術者がカナダには多く、またオカナガン地方のワイナリーも同様です。彼らの哲学と努力で毎年、多くのワインが製造されるのです。

春に植えられたブドウは、長い日照時間と恵まれた土壌によって生育します。ケロウナ特有の乾燥した夏の熱さによって、ブドウは育って行くのです。通常のワインは9月から収穫作業が始まります。

収穫されたブドウは、すぐに圧搾機に入れられます。
アイスワインの収穫は何度も経験していますが、2006年時は、ここまで大きく育ったブドウがそのまま氷結したのは初めてでした。ずっしりと重量感のあるブドウの房からは、59%という高い果糖度が抽出さ、極上品のアイスワインが生まれました。


11月になると、ワイナリーのオーナーは天気予報とニラメッコの日々が続きます。マイナス10度前後の寒い日々が数日続くことが、美味しいアイスワインを作るコツなのです。

暖冬ですと甘さが少ないアイスワインになり、厳冬の場合は甘いアイスワインになるのです。収穫されたブドウは、カチカチに凍っています。


これは、赤のアイスワインとなるピノノアールです。アイスワインは全体の95%が白ブドウで作られます。世界的に希少なアイスワインの中で、赤のアイスワインはさらに希少な存在で、まさに「幻のアイスワイン」と言われます。


そのままの状態で凍ったブドウは搾られるのです。搾り取られた液体がアイスワインの原液なのです。
じっくり熟成させ、琥珀色の液体に変わるまで、数ヶ月の時間を要します。約半年後にはアイスワインに生まれ変わるのです。



早朝から収穫作業に従事したスタッフを慰労するために、ワイナリーのオーナーが手作りのお料理を振る舞ってくれます。

ホットワインを飲みながら、無事にアイスワインの収穫ができた喜びをみんなで分かち合う瞬間です。




アルプスの少女ハイジが愛した白ワイン


St.Hubertus & Oak Bay Estate Winery White wine Gewrztraminer



私がこの白ワインに私が出会ったのは2001年だっ たと思います。
セントヒューバータスワイナリーが作るワインを日本へ輸出し、日本で販売する仕事を立ち上げたとき、この白ワインは生産数が少なかったため、日本への出荷 ができませんでした。

もともと生産数が少ないということと、地元の市民のお気に入りワインのため、あっという間に完売してしまうため、なかなか思うように日本へ出荷する数を確 保できなかったからです。
その後、生産数が幾分ふえたことから、日本へ出荷できるようになりましたが、しかし、今でも現地ケロウナで完売してしまうときが多くて、思うように仕入れ ができない幻の白ワインです。


この白ワインを初めて飲ん だときのことは今でも良く覚えています。

私がワイナリーのテイスティングカウンターで、のこの白ワインを口にしたとき、その衝撃的なフローラルな香りと味わいで、私は言葉を失いました。

そのとき、ワイナリーのオーナーの奥さんのバーバラさんが、

「そりゃそうよ! これはハイジが愛したワインだからね!」

とお茶目にウインクしながら私に語ってきました。

「ハイジって知っている?」

バーバラさんの問いかけに、

「もちろん!日本でもアルプスの少女ハイジは有名ですよ!」

と、すかさず私は返答しました。

あれれ???
ハイジは子供だからお酒は飲めないはずだけど・・・?

と、そんな素朴な疑問を蹴散らすように、バーバラさんはニコニコ笑っていました。理由はすぐに分かりました。


(ブドウ畑で大忙しの剪定技師のバーバラさん)


このセントヒューバータスというワイナリーは、オーナーさんご家族はもとより、ワイナリーで働いている人たちは、みなさんスイス人なのです。ワインを作る ためにスイスからカナダに移住して、ワイン産地のケロウナにワイナリーを開いたのです。

バーバラさんは毎日忙しくブドウ畑を巡回しています。バーバラさんは凄腕の剪定技師ですから、ブドウの枝や葉の成育具合を見ながら、葉落としや枝きりをす るのです。私がワインの仕事を始めた当初、ワインのことを勉強するために、毎日このワイナリーに通っては、バーバラさんの助手として畑の作業をしていたこ とを懐かしく思い出します。

さて、私の師匠であるスイス人のバーバラさんが言うのですから、これは間違いなく「ハイジが愛したワイン」なのです。

2001年の春、私が「アルプスの少女ハイジが愛したワイン」に出会ったカナ ダでの思い出です。



このベゲルツトラミネールのご購入は【わいん@カナダ】から